自動車を所有することは、多くの自由と同時に、法律やルールを遵守する責任も伴います。特に、車庫証明で登録した場所以外での駐車、俗に言う「車庫飛ばし」は、多くのドライバーが知らず知らずのうちに犯してしまう違法行為の一つです。この行為がなぜ問題なのか、その実態と法的なリスクについて解説します。
車庫飛ばしとは
車庫飛ばしとは、自動車の所有者が実際に使用している駐車場とは異なる場所で、車庫証明を取得する行為を指します。具体的には、実際に自動車を駐車している地域とは別の場所で車庫証明の登録を行う状態をさします。このプロセスにおいて、普通車を購入、または譲り受ける際には、警察署から車庫証明書の交付を受け、運輸支局に対して駐車場が確保されていることを証明する必要があります。車庫証明を取得する際の条件には、「自宅から2km以内に車を駐車する」という規定があり、この規定に違反する行為が「車庫飛ばし」と呼ばれる所以です。
車庫飛ばしの具体例
他の自治体のナンバー取得のための偽装
車の所有者が居住地域を偽装し、別の自治体のナンバープレートを取得するケースは、特定の地域に関連するイメージやステータスを求めたり、地域による車両の規制を避ける目的で行われます。
このために、その地域に住んでいる知人の住所に住民票を移し、近くの賃貸駐車場を短期間契約して使用承諾書を手に入れる手法が取られます。
品川、横浜、湘南など、あこがれる地域のナンバーを得たい気持ちは理解できますが、この行為は違法です。
都心部登録で郊外駐車によるコスト削減
都心部で車庫証明を取得しながら実際には郊外で車を駐車するケースでは、都心部の駐車場の高額な料金を避けるために郊外の安価な駐車場を利用します。
例えば、自宅から2km以内の駐車場が高額であるため、2駅先の郊外で駐車場を契約すると、駐車場代が大幅に削減される場合があります。月に1、2度しか車を使用しない場合でも、違法行為に変わりはありません。
都内登録不可能なディーゼルエンジン車の所有
特に東京都では、一定の排ガス基準を満たさないディーゼルエンジン車の登録が制限されています。このため、制限を回避し、こうした車両を所有するために実際の駐車場所と異なる場所で車庫証明を取得するケースがあります。
例えば、東京都内で運送車両を使用しながら、車検証は県外で登録されているケースがこれに該当します。石原慎太郎氏が都知事時代にディーゼル車の排ガス問題に対して取り組んだことはよく知られており、彼の尽力は多くの人々に記憶されています。
罰則
車庫飛ばしに関連する罰則として、主に二つの法律違反が考えられます。一つは、「公正証書原本不実記載等の罪」であり、これは刑法第157条に基づきます。
車庫証明などの公的文書に虚偽の内容を記載する行為は、この法律に違反することとなり、刑事罰の対象となり得ます。
さらに、「車庫法違反」としても問題視されます。車庫法(正式には「自動車の保管場所の確保の促進に関する法律」)は、自動車の適切な保管場所を確保することを目的としており、車庫飛ばしはこの法律の趣旨に反する行為です。
実際に検挙されるケースは少ないかもしれませんが、法律違反のリスクを無視することはできません。特に、駐車場所を確保せずに路上駐車を行った場合は、駐車違反として取り締まりの対象となります。
知らないうちに
車庫飛ばしと一言で言っても、その背後にはさまざまなパターンが存在します。例えば、引っ越しに伴い住所が変わったにも関わらず、15日以内に車検証の住所変更を行わない場合、これも厳密には車庫飛ばしに該当します。知らず知らずのうちに法律違反をしてしまわないよう、常に注意が必要です。
また、車庫証明が「自宅から2km以内」という規制については、改めるべきだと個人的には考えます。生活の多様性を考えると、例えば郊外に駐車場を借りて月に一度のドライブを楽しむといった正当な理由がある場合には、柔軟に対応されるべきです。また、カーシェアリングの普及などを考えると、将来的には複数の駐車場を申請できる制度が必要になってくるかもしれません。社会の変化に合わせて、法律や制度も進化していく必要があるでしょう。
まとめ
車庫飛ばしとは:実際の駐車場所と異なる場所で車庫証明を取得する違法行為。
具体例:
他の自治体ナンバー取得のための偽装。
都心部登録で郊外駐車によるコスト削減。
都内登録不可能なディーゼルエンジン車の所有。
罰則:公正証書原本不実記載等の罪(刑法第157条)、車庫法違反。
注意点:引っ越し後の速やかな車検証の住所変更が必要。
提案:生活の多様性を考慮し、車庫証明の「自宅から2km以内」の規制見直し、カーシェアリング時代に合わせた制度の検討が必要。
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